リンゴの唄

「みちこちゃんはどこから来たの?」

「えーっと、青森県から来ました!」

「へー!青森と言えばりんごが有名だよね!そうだ、一曲みんなの前で歌ってみせてよ!歌はほら、リンゴの唄とかさ!」

「えーっ!?じゃ、じゃあ一曲だけ・・・。」

「いいよー!はいっ、チャンチャカチャーン!チャンチャンチャンチャンチャカチャカチャカチャーン!」

私が保育園に通う4歳児クラスだった頃、お父さんとお兄ちゃんは死んだ。お空から飛行機が飛んできて、鉄砲で撃たれてしまったのだ。

「赤いリンゴに 唇寄せて だまって見ている青い空~♪」

みちこちゃんのお母さんってどんな人?

えっと、怒ると怖いけどとっても優しいお母さんだよ。

へー!いいなー!○○もみちこちゃんのお母さん見て見たいなー!

・・・。

「お母さん!早く逃げよう!空から飛行機がいっぱい爆弾落としてきてるよ!みんなのお家が燃えちゃうよ!」

「みちこ、お母さんはもう動けないの。足が折れちゃったから、あなただけでも逃げなさい。」

「嫌だよ!お母さんをおいて逃げるなんて絶対出来ないよ!」

「みちこ!!もうすぐこの辺りはみんな燃やされてしまう。だからみんなが逃げてる川に飛び込みなさい!そうすればあなたは必ず助かるから・・・。」

「お母さん!お母さあああん!!」

「リンゴは何にも言わないけれど リンゴの気持ちは よくわかる~♪」

「リンゴ 可愛いや 可愛いやリンゴ~♪」

あの日、私の目の前ではたくさんの人が死んだ。全身ガラスのかけらが刺さったおばさん、真っ黒になるまで焼かれて、誰が誰なのかわからない人、空から降って来た爆弾が身体に刺さってちぎれてしまったお姉さん。あの地獄とも呼べるような景色を思い出すと、涙が止まらなかった。