「ねぇ○○ちゃん、友だちって何だろう。」
「急にどうしたの?○○ちゃん」
「んー・・・。例えばだけど、たろうくんいるじゃん。」
「ああ、確か病気でお休みしてるって言う。」
「たろうくん、元気にしてるかな?」
「それはわかんないけど、どうして?」
「お母さんから聞いたんだけど、たろうくん最近元気ないんだって。たろうくんのお見舞いに行きたいって言ったんだけどお母さんは『今は会わない方がいい』って。」
「たろうくん、私たちと会いたくないのかな。」
「・・・ほら、○○ちゃんこの前みんなでお手紙書いて出したじゃん!」
「字を書ける人だけでね。私とか○○ちゃんは字をかけたからお手紙出せたけど、他の3歳クラスとか女の子しか書いてないし、4、5歳クラスだって書かないで知らんぷりしてる子だっているんだよ?たろうくんが保育園にいたときはあんなに楽しく一緒に鬼ごっことかかくれんぼで遊んだのに。」
「たろうくん、友だちじゃなかったのかな。」
「・・・。」
「友だちか。」
「初めから僕に友だちなんて、いなかったのかもな。」
「えっ?」
「ううん、なんでもない。」
「そう。はい、たろう。りんご剥けたわよ。」
「ありがとうお母さん。」
「たろう、保育園からのみんなからのお手紙読んだ?」
「・・・読んでない。」
「みんながみんな、同じ気持ちではないのかもしれないけど、少なくともお手紙を書いてよこしてくれた子はたろうのことを心配してくれる優しい子だと思うの。」
「もういい、聞きたくない。」
「せめてお手紙の返事だけでも書いてあげたら、きっとその子とは友だちのままだと」
「もう喋んないでって言ってるでしょ!!」
僕の怒鳴り声に、お母さんは固まったのがハッキリとわかった。
「・・・ごめん、お母さん。ちょっと一人にさせてくれないかな。少し落ち着きたいからさ。」
「うん、ごめんなさいね。」
そう言うと、お母さんは部屋から出て行った。
「・・・。どうして」
「どうして僕はこんなにも、みんなを悲しい気持ちにさせるんだろう。」
「これなら生まれてこなければよかった。死ねばよかったんだ。ごめんなさいお母さん、ごめんなさい保育園のみんな。」
窓から眩しい夕日が差し込む頃、部屋からは僕の涙声だけが響いていた。