「知ってる?鳥は遠くまで飛べる鳥と近くまでしか飛べない鳥の二つあるんだって。」
「へー、何が違うの?」
「それはね、みんなで飛ぶか一人で飛ぶかの違いなんだよ。」
「みんなで飛ぶ?どういうこと?」
僕はみんなで飛ぶことが出来ない鳥です。なぜかというと、重い病気で保育園にずっと行けてないからです。お母さんが言うには、白血病とかなんとか。
「かわいそうだね。そう言えば、たろうくんは元気にしてるかな?」
「はやく保育園に戻って来られるといいね。」
病気のせいなのか薬のせいなのかわからないけど、病院で過ごすようになってから僕の髪の毛はほとんど抜け落ちてしまいました。
髪の無い頭をみんながみ見たらきっと馬鹿にすると思います。だから、保育園にはもう行きたくありません。
「たろうくん、保育園からたくさんお手紙来てるわよ。」
「いらない。ゴミ箱に捨ててよ。」
「そんなこと出来ないわよ。ほら、○○くんに○○ちゃんとか」
「いらないって言ってるじゃん!そんなもの読んだって辛いだけなんだよ!」
「・・・。」
「ねぇ看護師さん、僕の身体ってどうなってるのかな、僕は何のために生まれてきたのかな。」
「それは・・・」
「保育園に行けなくなって、僕の髪の毛は全部なくなって、こんな苦しい気持ちのまま最後はひとりぼっちで死ぬなんて、涙も出てこないよ。」
「・・・。」
「ひとりぼっちの鳥は、辛いことが起きても、泣きたい気持ちになっても、全部ひとりで何とかしなくちゃいけないんだ。だからみんなと一緒に遠くまで飛ぶことは出来ない。人もそうなんだよ。」