「お母さん、ピアノの発表会で保育園の歌弾けるようになったよ。」
「その曲、同じクラスの○○ちゃんが去年弾けてた歌ね。」
「そうだよ。」
「○○ちゃんと同じくらいにピアノを始めたのにね。発表会頑張りなさい。」
私のお母さんはおかしいです。
「○○、この前の言葉は80点だったね。」
「えっ?」
「『○○ちゃんは優しいから好きだけど、私のお父さんは優しくないから好きじゃない。』って言ってたでしょ?よその家にお父さんお母さんの話はやめなさい。恥ずかしいから。」
「私は・・・」
私はお母さんが大嫌いです。どうしてかと言うと、なんでも私が思ったことを決めつけて、私の気持ちを消してしまうからです。
「今日は雨だから嫌だね。」
「そんなこと、ないよ。雨の方が綺麗に見えるところだってあるし。」
「あの子は何が楽しくて保育園に行ってるんだろうね?」
「そんなこと、言わないでよ・・・。」
「あのお家は離婚してるから、子どもがかわいそうだね。」
私だけのことじゃありません。人の気持ちも、勝手に決めてしまう人でした。そしてついに、どうしても許せないことが起こりました。
「○○、あの子と一緒に遊ぶのはやめなさい。」
「あの子、なんだか品が無いしバカみたいな子だから。一緒に遊ぶなら○○ちゃんとか○○ちゃんにしなさい。」
「・・・どうして私の友だちまで勝手に決めようとするの?お母さんに私の何がわかるって言うの!?」
「わかるわよ、○○のお母さんなんだから。」
「勝手なこと言わないでよ!こんなお家なんか生まれてこなければよかった!」
「お母さんなんて大嫌い!」
そう言うと、お母さんは私のほっぺを思いっきり叩いた。その時お母さんの手には私の涙が付いた。
「出ていきなさい。あんたはもう私の子でなくなったから、お母さんもいなくなったから。今すぐこの家から出ていきなさい!!」
そう言われて、私は家から飛び出した。
外は雪が積もっていて、足にいっぱい雪がまとわりついた。
私は身体も心も全部冷たくて、涙が止まらなかった。