八日目の蝉

「ねぇ知ってる?セミって、いつも土の中で生きてるけど外に出てきたら七日目で死んじゃうんだって。私たちは一万回お布団で眠ってもまだ生きていられるけど、セミは七回寝たら死んじゃうんだよ。なんだかかわいそうだね。」

ちひろちゃんはそう思うの?」

「えっ?しょうこちゃんは違うの?」

「もし、みんなが同じ日に死んじゃうなら別に怖くないよ。それよりも、自分だけ八日目、つまり八回寝てもまだ生きてる方がずっと悲しいよ。だってひとりぼっちだもん。」

私のお母さんは二人います。一人は私を産んでくれたお母さん。もう一人は、私を盗んだお母さんです。

「しょうこ、今度のお休みの日どこに行きたい?」

「うーん、まだ行ったことない公園に行きたいな。」

「じゃあ○○公園に行こうかしら。しょうこはまだ、行ったことないよね?」

私を盗んだお母さんは「しょうこ」と言う名前を付けてくれました。いつも好きな公園にお出かけしてくれる、お風呂にも一緒に入ってくれる優しいお母さんです。けど、私の本当の名前は「あかり」。私を産んだお母さんが付けてくれた「あかり」という名前です。本当の名前を知ったのは、私を盗んだお母さんが逮捕された後でした。

「しょうこちゃんはどこの保育園行ってるの?○○保育園?」

「うーん、保育園には行ってないよ。」

「えっ!そうなの!?」

ちひろちゃんはどこの保育園なの?」

ちひろは○○保育園だよ。ななちゃんもそうだよね?」

「うん!そうだ、3人でセミを捕まえてみない?」

「えっ!?あのミーンミーンって鳴いてるセミ?捕まえられるの?」

「捕まえられるよ!だって、お母さんが虫取り網持ってきてくれたんだもん。しょうこちゃんとちひろちゃんの分もあるから捕まえに行こう!」

本当だったら私は「あかり」として保育園に通ってる子でした。けど、もう一人のお母さんが私を盗んだおかげで「しょうこ」という保育園に通わない子どもが生まれたのです。

私は本来存在しないはずの、八日目の蝉でした。