助けなければよかった?

僕は、あの子を助けなければ良かった。あの子は確かに、みんなからいじめられていた。

「おい!こいつやべーぞ!こいつの身体から変な匂いがする!」

「あっ!ほんとだ!くっせえー!まるでゲロみたいな匂いがプンプンするー!」

「おいゲロ野郎!こっち来るな!」

みんなはそんな風に臭い臭い言ってたけど、もちろんそんなことはなかった。みんなウソを言ってあの子をいじめていたんだ。そして僕は向かって言った。

「やめろよ!その子がかわいそうだろ!」

僕はそう言ってみんなからその子を守った。

「うわっ!ゲロの仲間だ!きったねえ!」「もしかしてこいつのこと好きなの?オエーッ!」「今度からこいつの近くで給食食べるのやめようぜ!ご飯がまずくて食べられなくなっちゃうからさー!」「それいいね!俺も今度から一緒に遊ぶのやめるわ!家とか絶対遊びに入れてやんないもんねー!」

そんなこと言われても僕は別に平気だった。だってそこまで仲が良いわけじゃなかったし。他の誰かがいじめられているのを平気な目で見たくなかったから。けど、僕が悲しい気持ちになったのはその次の日だった。

「よおゲロ!今日もお前くっせえな!」

「お前さあ、なんで保育園来てるの?誰もお前と一緒に遊んでくれるやつなんていないよ?」

そう言ってくるいじめ仲間の中に、昨日いじめられていたはずのあの子が入っていた。

「なんで・・・」

僕はそう呟いて、涙が止まらなくなった。なんで僕はあの子を助けたんだろう。僕がいじめられるようになって悲しくなったんじゃない。助けたあの子がいじめる人になってしまったことが悲しいんだ。こんなことになるくらいなら、あの子を助けてあげなければよかったんだ。

僕は保育園から飛び出して走って家まで帰った。車が僕に突っ込んできて轢き殺してくれればいいと思った。

家には鍵がかかってたから入れなかったけど、あんな最低な奴がいる保育園にいるくらいなら全然マシだった。